山と丘の違い
実のところ「山」と「丘」に明確な定義はない。
「山」も「丘」ともに周囲よりも高い地形を表すが、その違いに明確な定義はない。しかし誰もがそれぞれの言葉に明確なイメージを持てる言葉でもある。傾斜の険しいものが山で、なだらかな斜面を持つものが丘と思い浮かべることができる。
地図に掲載される「山」、「丘」の名称は、国土地理院によるものであり、地元住民の呼び方、地方自治体の公式名称、国土地理院の判断などを要件として決められていることから、地元住民が「山」と呼ぶか、「丘」と呼ぶかで名付けられるものである。
自然の造形物としての「山」
「山」も「丘」も地殻変動あるいは侵食により形成された地形である。
「山」はプレートの衝突による境界部での造山運動の影響がよりダイナミックに表出したものであり、傾斜が激しいものを「山」として認識できる。
プレートの衝突により大規模な造山運動が続いているものがヒマラヤであり、エベレストは現在でも年4ミリの速さで標高が高くなっている。日本においては日高山脈、丹沢山地が衝突型造山帯であるが日高山脈はその活動を終えたとされる。ヨーロッパアルプス、アパラチア山脈、ウラル山脈などいわゆる「山」が多い有名な山岳地帯はプレート移動による大陸衝突の痕跡によるものである。
「丘」と人間生活
「山」に対して「丘」は火山活動、侵食や断層による成因のものが多いが、「筑山」や「古墳」など人工的に作られた丘も多数存在する。相対的に標高が低く傾斜が緩やかであることは安定した地形であることを示している。
「丘」と名のつく有名な場所として、フランスのモンマルトルの丘、ギリシャのアクロポリスの丘、ブラジルのコルコバードの丘などがある。傾斜が穏やかで標高が相対的に低いことは、人間の活動範囲に含められる割合が高いということにつながる。人が街を形作り、生活を営んできた中で、標高が高い場所というのは象徴的な場所とされてきたのである。「山」が自然そのものとして認識されるのに対し、政治、宗教、文学などより人間の営みに近い「場所」として存在しているのが「丘」である。
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